2013年11月9日土曜日

自己啓発は人格改造ではない~「自己啓発」は私を啓発しない/ 齊藤 正明

(2013年5月25日のアメブロから加筆・再構成して転記)

「自己啓発」は私を啓発しない / 齊藤 正

)

以前、こちらのブログでも紹介させていただいた、齊藤正明さんの著作です。


■【読書】マグロ船で学んだ「ダメ」な自分の活かし方


齊藤さんのご著書は、どれを読んでもいい意味で肩の力が抜ける感じがします。
「自分が、自分が」と力んでしまっているときに読むと本当に目が覚める想いになります。

この本で齊藤さんが伝えたいことは、6章にすべてまとめ垂れているのだと思います。だからといってそこだけ読めばいい、というものでもないありません。それではもったいない。

「自己啓発セミナーに600万円つぎ込んだ」という体験談、それも、悲壮感を漂わせるわけでなく、ユーモアを交えながらリアルな体験を語ってくれている部分を読んだうえで、第6章に進むとより齊藤さんが伝えようとしたことがわかるような気がします。


目次

第1章 人間関係に悩み、自己啓発にハマる
第2章 次々と自己啓発をくりかえす日々
第3章 自主開催セミナー・異業種交流会・ネットワークビジネス
第4章 会社を辞めて起業することに
第5章 講師として起業し、成功をつかむことに
第6章 自己啓発から教わることはない

■つまり、宙に浮いたような「個人」という存在はありえず、人は必ずといっていいほど、蜘蛛の巣よりも細かい網の目のようにつながっている周囲の人との関係を持って生きなければならないのです。(p196)

「『自己』啓発セミナー」というくらいですか、自分のスキルやノウハウを向上させることが目的で参加するのだと思います。

僕もそういうことが目的でセミナーに参加しているわけですが(笑)、そうして何かを身に着けると意識が高くなって

「自己実現のためには□□をしたい」「自分は○○をするにふさわしい人間だ」
という自分の願望が先行してしまうようになりがちです。

「絆」とか「ご縁」とか「ネットワーク」とか言い方はさまざまですが、そうしたことを口にしながら実際は「自分が、自分が」ということになっている人も見かけます。

でも、世の中自分一人では何もできない。周囲の期待に応えて、結果を残して、それが評価されることで(小難しく言えば「承認」されることで)自分の存在を確認でき、喜びを感じるのが人間ではないか、と僕は思います。周囲の期待と無関係に自分のやりたいことをするのは「趣味」です。少なくともそれは対価をいただくべき仕事ではないでしょう。

むろん、なんでもかんでも周囲から「やれ」といわれたことをやればいいというものありません。結局、自分が持っているもの、新しく身に着けたものの中で、どんなことなら周囲の貢献できるのか、それを考えて、周りを喜ばすことで自分も喜びを感じる、というのが本質のようなに思います。(これは10数年前の自分に言ってやりいたいことです)


■自分がより高い人格を目指し努力します。それに伴い、周りに自分を支持してくれる人が少しずつ増えてきます。だからといって、どこまで努力しても全員があなたのいうことを聞いてくれる神のような存在になれるわけではありません。(p204)

『人を動かす』という名著のタイトルのせいかもしれませんが「動かす」という言葉がビジネス書やセミナーでよく使われます。ただこの言葉、誤解されやすいし実際誤解されているのではないかと思います。

動かす=他人をコントロールする、ではないと僕は思います。

動かすとは「共感を得ること」。共感を得ることが目的であって、自分の思い通りに操ることが目的ではありません。そして、共感を覚えれば人は何らかのアクションを起こします。結果的に自分を応援してくれたり、同じ目的・目標のために動いたくれたりすること多いということだと思うのです。

■自己啓発から教わることはない(p206)

ここが本書で一番言いたかったことではないか、と思います。

現在、「セミナー講師」をされている斎藤さんがこう言い切るのは凄いと思いますが(笑)「教わることはない」であって「学ぶことはない」ではありません。ライオンがカメに「シマウマはこうやって狩るんだよ」と教えても役に立たない、という意味のことが書かれています。講師の教えることは講師の勝ちパターン。それが万人に、つまり私という生徒にそのまま役に立つかどうかはわからないわけです。

ですから、自分にあったところだけを取り入れる。つまり、自分で取捨選択をして「自発的」に学ぶということが大切なのだと思います。最初は教わった通りにすべてを真似してみるのもいいと思っています。やってみないと自分にあっているかどうかはわからないから。

でも、できないからといって自分を責めるのではなく
「これは自分にあわないとわかった」
という学びに変えて、次のトライアルに向かうことが「自己啓発セミナー」の有効な活用法だと僕は考えています。



この本を読んで、(いくら使ったかは別にして)自分も同じような形でセミナーに参加している、と心が痛くなる人もいるかもしれません。

でも、「おわりに」こう書かれています。


■「今」の自分というものは、人生の中で一番賢い存在でありつつも、まだ若くて未熟でもあるという、不思議な存在なのです。(p213)

過去の間違え・失敗はすべて学びです。まだ未熟だったが故の失敗を学びに変えて、これからの人生で一番若い今から、新たにまた始めればいい。

僕自身、いつもそんな気持ちでいたいと思っています。